2010年7月18日日曜日

アリスファームとホテルドローム

結婚記念日の記念旅行に、11ー12日と1泊で、小樽の先、赤井川村にあるホテルドロームというところに出かけてきました。

この地域は100年くらい前は金や銀が採れた鉱山で、ホテルは鉱山跡に作られ古材など廃材を使って建設されたので独特の雰囲気がある。

ホテルを経営しているアリスファームは、もともとはアメリカのシェーカー教徒が行っていた自給自足的生活を目指した共同体で、シェーカーの家具を作ったり、染物をやったりしていた。今はブルーべりー園をやってジャムなど作って販売もしている。このアリスファームを始めたのがとてもユニークなお2人、宇土巻子さんと藤門弘さん。私は宇土巻子さんの『園芸の食卓』『闘う園芸』などの本を偶然に見つけて読んだら面白くてファンになり、最近夜寝るときに彼女の本を読んで眠りにつくのが日課となっていた。

宇土巻子さんはハーブやハーブ料理、園芸に関する本をたくさん書いているが、それらは通常のマニュアル本とは一線を画す、園芸の喜びや楽しさがちりばめられている本。いつしか園芸熱に取り付かれてしまい、気がつくと菜園や温室で時が経つのも忘れて作業をしている、私も最近家にいるときはしょっちゅうしょっちゅうベランダに出てアブラムシを退治したり、ハーブを眺めたりしているので、その気持ちがよくわかる。

ハーブの本は得てしてマニュアル的であったり、栽培、収穫、加工、料理とただ順番に並んでいるだけであったり、おしゃれを狙ったものであったりするが(もちろん目的によりけりでマニュアルも必要であろうが)、栽培の楽しさをこれだけ伝えている宇土さんのような本はなかなかないのではないだろうか。『ベニシアのハーブ便り』のベニシアさんの本も素敵な本ではあるが、加工の話が中心で、栽培の喜びは私にはそれほど伝わってこない。また、環境やエコといったことを掲げていて、宇土さんの本もそういった面はあるが、それは自然のサイクルの尊重といった形で表れ、ハーブとの付き合い方の一つとして栽培という方法があるというように、大義名分は掲げず謙虚なのである、そういうところがとてもよいなあと思う(余談であるが、ベニシアさんも宇土さんも1950年生まれで若いときにインドを訪れた経験を持つ)。

宇土さんの「ハーブは装飾性と実用性を兼ね備えているところが好きだ。実質を重んじる私は、飾るための花を、飾るだけの目的で栽培することに、なんとなく後ろめたさを感じるのである」「家族と暮らすようにハーブと一緒に暮らすのが好きだ」という感性も好きだし(ハーブって料理に使うのも楽しいのだが、ただそこにいるだけでよいのだよね。園芸好きな人はきっと共感するのではないだろうか)、それにもかかわらず友人に頼まれ断り切れずにデルフィニウムを育てたら、美しく成長して菜園の一角を彩り、しばしば作業の傍ら見入ってしまったとか、ああ、それもわかるなあという感じでうなずいてしまう。また、本州のハーブ研究家が「秋蒔きすると春まで楽しめます」などとのんきに書いているのを見ると、1年中ハーブを楽しめるのに嫉妬して「こっちは冬は雪が降るんだよ」と悪態をつきたくなってしまうが、北海道に暮らす宇土さんは「こういう土地で園芸をするというのはやりたいことの半分はあきらめなくてはならないことを意味する」と潔い、そういうところも気に入っている。

てな感じで私は毎朝毎晩のようにカッパさんに宇土さんの本の中身について熱く語ってきたので、結婚記念日の旅行はぜひそのアリスファームの経営するホテルドロームに行こうということになった。聞くところによると敷地は広くキャンプ場も併設されており、自然が豊かで、そして料理もすばらしいというじゃないですか。これは行くっきゃない!!

というわけで前置きが長くなりましたが行ってきました。


ホテルの入り口

金を駅まで運んだトロッコを利用したホテルの看板

→はキャンプ場のかわいいトイレ

キャンプ場は1組がテント張ってるだけでした。野鳥観察会も開かれるくらい、野鳥の鳴き声で満たされたキャンプ場。朝は野鳥の声で目が覚めました。

ホテルドロームのフィッシングエリア→

散歩の途中で見たアスファルトを突き出て伸びている蕗
ドロームのラウンジ、ヨーロッパの友達の家に来たみたい








恐らく期待が高すぎたのでしょう、ディナーはアリスファームで採れたであろうハーブや旬の野菜をたっぷり使っていて、とても良心的に作ってくれていたことはよくわかりましたが、あまりに期待していたためか、期待していたほどでは・・・という印象が残りました。なんとその日に泊まっていた客は私たちだけで、私たちだけのためにスタッフの方が料理してくれていたのでした。
スタッフの方に聞いたところによると、以前このホテルは鉱山会社が経営していて、アリスファームの藤門さんや宇土さんは時折友人たちが来たときに利用していたが、鉱山会社が立ち行かなくなり、アリスファームが経営することになったという(アリスファームはホテルから15キロ離れている)。ホテルの調度品などは椅子以外全部、以前からのものだそうだ。ホテルのパンフレットに「鉱山の歴史は自然破壊の歴史でもありました。ドロームは豊かな自然を取り戻す新たな時を刻んでいきます」というようなことが書いてあったから、この自然豊かな土地が他の人の手に渡ってしまうくらいなら、自分たちでやろうということになったのかもしれない。自然のサイクルで物事を考えているお2人だから、がつがつホテルをやってお客を呼び込んで人間のための土地利用をしようということではなく、この自然を楽しむために、興味がある人が来てくれたらお迎えしますよ、というスタンスなのだろう(と勝手に理解している)。


次の日はあいにく1日中ざーざーぶりの雨でしたが、帰りに余市に寄って去年も訪ねたニッカウィスキーの蒸留所を見学して帰りました。
←ウィスキーを蒸留する窯

カッパさんが試飲所からなかなか出てこないのでしびれを切らして見に行ったら17年もののウィスキーを飲みながら目に涙を浮かべていました。カッパさんは「17年ものの美味しさに感動している」と言ってましたが、「無料で17年もののウィスキーを飲める」ことに感動していたに違いない。
小樽でお鮨を食べて帰ろうかと言ってましたが、あまりに雨がすごいので、小樽には寄らずに一目散に家に帰りました。家に着いたらすぐにベランダに直行して水をやったり1泊2日の間の野菜の成長に目を見張ったり。私は旅に出るのも好きだが、家でハーブについたアブラムシの退治をしているのも、恐らく旅と同じくらい、もしくはそれ以上に好きである。

4 件のコメント:

fine さんのコメント...

アリスファームとホテル土ロームのホームページを訪問してみました。smちゃんの写真を見ても、すてきなところだなと思ったよ。今度訪札したときは、訪ねてみたいなあ。翌日がざあざあぶりというのは残念でしたね。
 北海道にいるからこそ味わえる旅だったでしょう。

win min tan さんのコメント...

おもしろいホテルだね。
料理が期待倒れだったのがおかしかった。
やっぱり、キャンプで自炊がいいかもね。肉買って行って、ハーブわけてもらって調理するの…。私も行ってみたいわぁ。

北海道、たくさん見て回るところがあるね!

smk さんのコメント...

ママたちが今度来るとき一緒に行ってもよいかもなあと思いましたが、洋食なのでパピュが文句言いそう。小樽の先は積丹半島、果樹園の多い仁木(さくらんぼ狩りができる)などがあって魅力的なエリア。札幌からも近いしね。

smk さんのコメント...

うん、独特なホテルだった。スウェーデンをイメージしたホテルだそうで、入り口にはヨーロッパのアンティークの調理器具や農具が飾ってあったり。建物は古材を使い、家具はヨーロッパから輸入し、古いホテルのように見えるけど開業は95年。このホテルを作った人は相当な趣味人だと思う。

周囲は野鳥の森なので、win min tanさんカップルと来たら面白そうだと思いました。

料理は新鮮な食材を使っていて味付けもよかったしそれなりに美味しかったのですが、私の妄想があまりに膨らみすぎていたようです(カッパさんは「期待しすぎないほうがよいよ」と言ってた)。確かにキャンプの方がよいかも、余市で海産物や肉をたくさん買ってバーベキューとかね。この辺美味しいものの宝庫だから。

北海道で、本州からの移住者がやっている宿は本当に個性的なところが多いです。泊まった後にその宿のことや経営者の人生観までカッパさんと憶測して話したりして、事後もけっこう面白いです。