2011年3月25日金曜日

放射能の食品汚染に関する基礎知識

今回の原発事故で放射能に関する基礎的知識が欠けていることを痛感した人たちが少なくないと思いますが、私もその一人です。つい2週間前までヨウ素、セシウムなんてまったく知りませんでしたが、いまや日常生活用語になっていますね。オソロシヤ・・・ 日本の脱原発運動の中心的人物であられた故高木仁三郎さんの著書『食卓にあがった死の灰』(講談社現代新書)は、放射能の影響に関する基礎知識を一般向けにわかりやすく説明しているので、一読をおすすめします。ただ、ネットで検索すると古本しかなくすぐに入手できないケースも多いと思いますので、私が重要だと思ったところを下記のとおり抜き出してみます。 ・放射線の被曝に対する基本的な考え方としては、「このくらいは浴びてもよい」という態度は好ましくなく、「避けられる被曝は可能な限り避ける」というのが正しく、この点をよく理解しておくことが食品汚染の問題を考えるときには大切である。p. 30 ・放射線の危険度の評価というもっとも根本的ともいえる問題については研究者によって評価が一桁以上も異なる。現在日本では、一般人の年間許容線量を1ミリシーベルトとしているが、著者によれば、危険率の評価値は少なくとも10倍厳しく改められるべき(許容量を10分の1に切り下げるべき)。p.33-35 ・チェルノブイリ事故後、食品を通して入ったセシウムによって、汚染が体内に蓄積する様子のグラフを見ると、食生活に気をつけて汚染の高いものを避けた人と食生活に気を使わなかった人のセシウムの汚染度の差が歴然としていることがわかる。事故そのものに問題の根本はあるが、事故後の適切な対策の必要性がわかるだろう。適切な対策という点では1.データの迅速で完全な公開、2.迅速な措置(避難が3年半後に立ち遅れた事例もあり)、3.安全サイドの規制(経済や社会に対する打撃への思惑から、住民の安全への配慮=汚染食品の規制が大幅にうすめられてしまった)p. 66-68 ・チェルノブイリ事故後のさまざまな経路から生じる被曝の割合を、オーストリア政府が見積もったものを見ると、そのほとんどはヨウ素とセシウムによるものだが、圧倒的に大きな被曝(80%)が食品からのもので、次に重要なのは地面の汚染に起因する外部被曝(15%)だという。私たちが食品汚染に注目するのもそのためである。事故後、基準値の設定などをめぐるヨーロッパの各国の対応はそれぞれだったが、どの国にも共通していたことは、「人体への影響はたいしたことない」と国民の不安と混乱をおさえるのに懸命だったことだ。正確な情報と具体的な対策を提示しない政府の態度に不信感が高まり、汚染から身を守るにはみずからの手で測定をはじめるしかないと、市民による測定活動が活発に行われるようになった。p.89-90 ・西ドイツでいちばん積極的な対策を実施したドイツのヘッセン州は、5月2日にウシの放牧を控えるよう農家に勧告するとともに(チェルノブイリ事故の発生は4月23日)、乳幼児や妊産婦の安全を考慮し、牛乳の1リットルあたりのヨウ素131の制限値を20ベクレルと決めた。p. 93 ・時間の経過とともに汚染が拡がっていくなかで、汚染から身を守るには市民が独自の自衛策をとっていくしかないと、市民が共同出資して測定装置を購入し、自分たちで食品を測定するというグループが誕生した。放射能を測定する肉屋さんとしてテレビなどで紹介され有名になったペーター・ヤコブさんは、販売する肉を測定し、測定値を明示して販売している。基準値を1キロあたり70ベクレルと設定し、これを超えるものは産地に送り返す。また、肉の入荷のない日は近くの市民のために測定値を開放している。p. 93-94 ・フランス政府はヨウ素131の制限値をミルク1リットルあたり3700ベクレル、野菜1キロあたり2000ベクレルととんでもない高い値に設定した。p. 98 オランダ消費者連盟は、食品の放射能基準値をもっと下げるべきと主張。牛乳・乳製品・乳幼児食品については40ベクレル、その他の一般食品では60ベクレルまで下げるべきだとしている。p. 99 オーストリア政府は、食品の基準値を乳幼児食品についてはセシウム137とセシウム134の合計値で1キロあたり11ベクレルと決めるなど、きめ細やかな設定をしている。p. 104 一般に東欧諸国では測定データなどの公開が十分でなく、市民の側の独自測定などの体制も不可能だったため、市民は混乱したり、また、何の情報も与えられないままに不要な被曝を強いられたりした。p. 103 ・汚染が持続するなかで、とくに汚染度の高い食品は?と問われれば、淡水魚、トナカイやシカなどの野生動物の肉、きのこ類があげられる。これらのほかには、ヘーゼルナッツなどの木の実、果物ではベリー類、香辛料、ハーブ類、紅茶、蜂蜜など。p. 106-107 ・日本の放射能暫定基準値は1キロまたは1リットルあたり370ベクレルである。これを定めたのは1986年10月。その後1989年4月から一般人の年間許容被曝量がこれまでの5分の1、年間1ミリシーベルトに切り下げられたのに、370ベクレルの基準値はそのままである。規制値や基準値というのは、最悪のケースを想定して、それでもすべての人が許容限度より十分低い被曝となるように設定されるべきものではないだろうか。「実際にはそんなに汚染されていないだろう」とか、「実際にはそんなに食べないだろう」というかたちで、制限値を“値切る”ようなことはすべきではないだろう。いずれにしても、厚生省の態度は国民の健康のことを本気で考えているとはとても思えない。p. 129-132 ・日本の原子力安全委員会の「防災指針」には、ヨウ素に関しては飲食物の摂取制限の基準値が与えられている(飲料水 111ベクレル/ℓ、葉菜7400ベクレル/kg, 牛乳222ベクレル/ℓ)。この基準値はとても高い、とくに、葉菜類の制限値をキログラムあたり7400ベクレルととっているのはどういう根拠なのか、高すぎる値である。p. 184 長くなってきたので今日はこれまでにしてまた明日続きをアップします。要は、政府の基準値を絶対視せず、自衛するしか汚染を減らす手立てはなさそうです。汚染食品の摂取による被曝線量の計算の仕方もp. 130に載っています。

2 件のコメント:

fine さんのコメント...

smちゃん。
早速、「食卓にあがった死の灰」と「原発事故日本では?」の2冊、古本で注文しました。
原発のこと、本当によく知らないものね。テレビのご用学者のことばかりでは、反対できないしね。

smk さんのコメント...

この本を読んで、今の日本の飲料水の基準、乳児は100ベクレル以下、一般人は300ベクレル以下というのは、実はとても甘すぎる基準値ではないかと思った。

だって、ヨーロッパ各国のチェルノブイリ時の対応は、乳児や妊婦に対しては牛乳は20ベクレルとかなのに、日本は5倍の100ベクレルなんだよ。だから、基準値以下になったからといって警告を解除して、水道水をミルクにといて乳児に飲ませている人がいたら危ないのではないか。

さらに政府は基準値を近々緩和しようとしているらしい。おそらく農家の救済が念頭にあると思われるが、政府のことを鵜呑みにしていたら自分や家族の健康を守れないよ。